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「白いウソ-- 牛乳の真実」 原題“White Lies” 4

「白いウソー牛乳の真実」  原題“White Lies” 4


 


がん


英国人の4人に1人はがんで死ぬことになります。3人に1人以上の人は自分たちの人生のいずれかの段階でがんを発症します。毎年20万人以上ががんと診断されます。1日600人が新しく診断されている計算になります。がんは今や英国の男女の最も一般的な単独の死亡原因です(Department of Health, 2000)。どんな統計で見ようと、がんは人々が最も恐れる疾患であることには変わりません。


 


過去50年間のがんによる死亡率はほぼ横ばいです(保健省、2000年)。がん診断技術とがん治療法の大幅な改善を考慮するとき、これは非常に憂慮されます。これはより多くの人々ががんになっている一方で、医療専門職側はいくら走っても追いつかれていることを意味します。


 


たいていの人は、喫煙が単独では最大の予防可能ながんの危険因子であることを知っています。確かに喫煙は、すべてのがんの3分の1、たとえば、肺、口、鼻の通路、喉頭、膀胱と膵臓のがんの原因となります。喫煙はまた、食道、胃、腎臓、白血病でもがんをひき起こす上で一役買っています。英国では喫煙は1年間で約12万人を殺していることになります(保健省、2000年)。禁煙によって、たとえ中年からでも、がん成長のリスクを劇的に減らすことができます。


 


しかしながら、あまり知られていない点は、1位の喫煙のすぐうしろに迫っているのは、予防可能ながんの危険因子第2位である間違った食生活だということです。研究が進むほどに、栄養ががん成長において主要な役割を果たしていることが明白になってきています(Donaldson,2004)。飽和動物性脂肪、コレステロール、動物性タンパク質、砂糖、塩、加工食品、はある特定のがんのリスクを増加させることが示されています。確かに、間違った食生活は、がんによる死亡の3分の1の原因である可能性があります。食生活と特有なかたちで結びついているがんには、腸、胃、口、喉頭、食道のがんが含まれます。間違った食生活はまた、乳がんと前立腺がんを含む他の多くのがんのリスクを大きく助長します(Cancer Research UK, 2005)。


 


牛乳の消費を複数の特定のがんに結びつける証拠が、山のように積み上がってきています。この理由の1つは、牛乳中のホルモンとその他の生物活性化合物の濃度レベルの上昇です。この背景には、妊娠牛からミルクを採るといったような、酪農の過酷な集中化があります。換言すれば、牛乳産業は牛乳の生産量を高める目的で、酪農技術を強化・集中し、その結果、市販の牛乳と乳製品の75%から90%という高い割合が妊娠牛由来のものになっています(Danby, 2005)。(10 ページ、牛乳と乳製品の望ましくない成分 を参照)


 


植物性の食事は、飽和動物性脂肪、コレステロール、砂糖、動物性タンパク質、塩、加工食品の含有が少なく、がんを予防します。1994年に英国医学ジャーナル誌に、植物性の食事の予防的役割を追認する画期的な研究が登場しました(Thorogood, 1994)。研究者の調査結果によれば、ベジタリアンはがん死亡率が一般の平均よりも40%低く、これは、喫煙、体重、社会経済的地位というコントロールがあっても同じです。この論文の筆者は以下のように述べる。われわれのデータは肉食者にベジタリアンの食事に変更するよう奨励するに足る証明を提供するものではないが、変更する肉食者はがんによる早期死亡率の低下を期待できるかもしれない。言い換えると、あなたは肉食を放棄しないかもしれないが、もし放棄するならば、あなたはおそらくより長く生きることになるでしょう。


 


T. Colin キャンベル教授の浩瀚な「チャイナ・スタディ」(健康に対する食事の影響についての世界で最大規模の研究)に驚くべき観察がみられます。既存の研究と自らの研究に基づいて、キャンベル教授は食物性タンパク質の摂取量とがんとの間に直接の繋がりを見つけました。タンパク質が多ければ多いほど、ある種のがんのリスク、たとえば、肝臓がんのリスクが高くなるのでした。しかし、どんなタンパク質でもというわけではなく、動物性タンパク質だけの話でした。キャンベルは別の文化圏における動物性タンパク質の摂取量とがん発症率との関係を見てみようと決意しました。


 


 


大腸がんは、世界で最も一般的ながんの第4位です。米国では2番目に多いがんです。キャンベルの指摘によれば、北アメリカ、ヨーロッパ、オーストラリア、そして日本、シンガポールといったアジアの一部の豊かな国では、大腸癌の発生率は比較的高いです。いっぽう、アフリカ、アジア、中央、南アメリカのほとんどでは、はるかに低い発生率です。たとえば、チェコ共和国は男性10万人あたり34.19人の死亡率ですが、バングラデシュの数字は、男性10万人あたりわずか 0.63人です(Campbell and Campbell, 2005)。ある特定のがんの発生率が国によってとてつもない差を示すことを明らかにしているのはキャンベルだけではありません。


 


がん研究のための国際機関(IARC)の提供する驚くべき数字は、イングランドおよびウェールズにおける乳がんと前立腺がんの発生率を、中国の農村での発生率とを比較したものです。


IARC の報告によれば、1997 年にイングランドおよびウェールズにおける女性の乳がんの発生率は10万人当たり 68.8人でしたが、これに比べて中国の農村部では 10万人当たりわずか 11.2人でした。


同様にイギリスおよびウェールズの男性の前立腺がんの発生率は 10万人当たり28.0人でしたが、中国農村 10万人当たりわずか 0.5人でした(IARC, 1997)。


 


ある特定のがんの発生率が一部の国々では他の国々よりもずっと高いということは広く知られた事実でした。しかしキャンベルは、これらのがんと食物中の動物性タンパク質との関係に興味をそそられました。図 4.0 は、米国、英国、中国農村部における動物性タンパク質の摂取量の違いを示しています。米国では、総エネルギー摂取量の15%以上がタンパク質由来であり、そのうち70%が動物性タンパク質です(Campbell and Campbell, 2005)。英国では、食品エネルギーの16%以上がタンパク質由来で、そのうち、62%が動物性食品からきています(FSA, 2003 a)。いっぽう中国農村では、数字はかなり違っています。総エネルギーの9~10%がタンパク質由来で、そのうちわずか10%が動物性タンパク質です(Campbell and Campbell, 2005)。


 


異なる文化圏でのがん発生率の相違は、環境的(食事上の)影響というよりはむしろ民族的グループ間の遺伝的相違を反映しているのだという主張があるかもしれません。しかしながら、移民についての調査が明らかにしたところによると、低がんリスク地域から高がんリスク地域に人々が移住すると、彼らは2世代の間にがんリスクの上昇を獲得します(WCRF/AICR,1997)。したがって、これらの大幅な相違は、食事やライフスタイルといった環境要因に大きく起因しているのでなければなりません。キャンベルの結論は、動物性食品はがんリスクの増加と結びついており、いっぽう繊維や抗酸化物質を含む未精白穀物の植物性の食事は、がんの低発生率と結びついているということです(Campbell and Campbell, 2005)。この現象の一つの可能なメカニズムは、動物性タンパク質と植物性タンパク質の成分の相違にある可能性があります。


 


植物タンパク質には動物性タンパク質とは異なる構成の別のアミノ酸が含まれます。具体的には、植物タンパク質には必須アミノ酸のメチオニンおよびリシンが動物タンパク質よりも少なく、逆に非必須アミノ酸のアルギニン、グリシン、アラニン、セリンを多く含みます。植物性の食事を主に摂取することには、がん成長に関わる複数の化学物質の生物学的作用を制限するような連鎖効果があるということが示唆されています(Krajcovicova-Kudlackova, 2005)。ベジタリアンの食事は、単に肉や動物性食物を排除しているというだけでなく、がんに対する一連の有益かつ予防的な因子が存在する点でも、より健康的な選択肢です。植物性の食事には飽和脂肪が少なく、良い脂肪(オメガ3、オメガ6不飽和脂肪酸)が多く、複合炭水化物が多く、繊維もビタミンもミネラルも抗酸化物質も多いのです。これらの要因が、ベジタリアンにがんのリスクが低いことの理由の一つです。


 


果物や野菜の摂取を増やすことは、禁煙後などにがんのリスクを軽減する2番目に効果的な戦略と見なされています。確かに、現代の栄養研究の最も重要なメッセージの1つは、果物や野菜の豊富な食事が、がんに限らず心臓病や糖尿病を含む他の多くの病気に対しても予防効果を持つということです(Donaldson, 2004)。1日に果物と野菜を少なくとも5種類食べることによって、心臓病、脳卒中、がんなどの慢性疾患による死亡リスクを最大20%減らすことができるという見積もりがあります (英国保健省、2000年)。1998年に、食糧政策と栄養の医学的側面についての保健省委員会は 証拠を再検証し、野菜の高い消費が胃がん・大腸がんのリスクを減少させるとの結論を出しました。果物と野菜の高い消費が乳がんのリスクを減らすという証拠もありました(保健省、1998年)。


 


WHO によると、果物や野菜の摂取量の低いことが世界中の虚血性心疾患の約13%の原因となり、11%の卒中の原因ともなっていると推定されます。さらに、WHOは、もし果物と野菜の消費量が十分に増加した場合、最大2,700万人の生命が救われる可能性があるだろうとも推定しています。


この指摘は英国において大人よりも一層不健康な食生活をしている子供たちにとって特に重大です(Cancer Research UK, 2004)。一般に子供たちの果物や野菜の消費量は低く、低収入の家庭の子供は高収入の家庭の子供よりもはるかに少ないです。子供のうち5人のうち1人は1週間に果物はまったく食べず、5人のうち3人は葉野菜をまったく食べません(Department of Health, 2000)。


 


アメリカがん研究所と世界がん研究基金の共同研究は、身体運動と適切な体重の維持とともに推奨される食事は、やがてがん発生率を30%から40%低下させると見積もっています。現在のペースでは、食事とライフスタイルを変えることによって世界全体で、年間300万人から400万人のがん発症が予防できることになります(WCRF/AICR, 1997)。食事の重要性についての理解と意識を高め、人々の自分の食事についての選択への影響力を強化することによって、がんのリスク要因を大幅に減少させることができる可能性があります。他にもがんの成長の一因となる可能性のある因子として、肥満(乳がん、子宮内膜がん)、アルコール(口腔がん、咽頭がん、肝臓がん、乳がん)、日光(皮膚がん)、ラドン(肺がん)などがあるが、結腸直腸がんなどの一部のがんは身体運動によって予防可能である。


 


乳がん、肺がん、大腸がん、前立腺がんは英国のがんの件数と死亡数のすべてのおよそ50%を構成しています(英国保健省、2000年)。牛乳と乳製品が乳がん、大腸がん、卵巣がん、前立腺がんにおいて果たす役割をより詳しく論じます。


 


乳がん


英国の女性の9人のうち1人は、人生のある時点で乳がんを発症することになります。2003年には4万の新規症例が診断され、これは女性のすべてのがんの3分の1に相当し、同年約1万500人の女性がこの病気で死亡しました。1971年から2003年までの32年間に乳がんの発生率は80%増加しました(英国国民統計資料、2005 年)。図 5.0は 乳がんの発生率が急激に増加している一方で同期間の乳がん死亡率がかなりの安定を示しているのは、診断方法の改善と治療の効率化のおかげです。


 


遺伝子と乳がんとの結びつきが大きく解明されてきました。遺伝子BRCA1 とBRCA2 はそれぞれ1994年と1995年に発見されて以来、多大な注目を集めてきました。これとは別の2つの非常に珍しい遺伝子、P53 遺伝子と AT(毛細血管拡張性運動失調) 遺伝子があり、この2つはおそらくすべての乳がんのうち2%以下を占めています。遺伝子をがんに結びつけるようなこうした最近の発見によって、がん研究者の間には、遺伝学的決定論が台頭してきました。しかしながら、現在の推定では乳がんのうち遺伝子異常に起因するものはわずか5%に過ぎません(BACUP, 2005)。


これはがんの圧倒的多数(95%)は異常な遺伝子に起因するものではないことを意味します。第二に、異常な遺伝子を持っていることは、そのひとが確実に乳がんを発症することを意味するということではないということです。つまり、そういうひとは、異常な遺伝子を1つも持たないひとに比べて、発症するリスクが大幅に高いということを意味します(BACUP, 2005)。


 


 


 


 


10万人当たりの乳がん年齢調整罹患率は、国によって顕著な差が見られます。


たとえば、ウルグアイは非常に高く、10万人当たり114.9人、 2位は米国の 92.1人、3位はイスラエルの 87.1人です。 逆にずっと低い罹患率を示しているのが韓国で、 わずか12.7人、タイが16.1人、マリが 20.0人です (Ganmaa and Sato, 2005)。この落差に触発されて、食事と乳がんのつながりに対して、現在多大な注目が集まってきています。特に牛乳および乳製品の消費と乳がんとの関係が焦点となっています。


 


特定のグループ間のがんの発生率の比較研究が、食事と病気との関係に有益な洞察を提供する可能性があります。


ロンドン大学衛生熱帯医学の研究者たちの最近の報告によると、英国在住の南アジア人女性の乳がん発生率および生存率は一般の英国人女性よりもかなり低いのです(Farooq and Coleman, 2005)。食事に関するデータの収集はなされていませんが、同報告の筆者たちは、この観察された差は食事とライフスタイルの相違によって説明可能であるかもしれないと示唆しています。


英国がんジャーナル誌に発表された研究もまた、英国在住の南アジア人女性は一般の英国人女性よりも乳がんと診断される公算は小さいことを明らかにしています。しかし、乳がんのリスクは同じ南アジア人でもさらに特定の民族的な下位グループによっても差があることを発見しました。


様々 なことを発見することが少ないことを示しました。たとえば、インドとパキスタン出身のイスラム教徒の女性が乳がんを発症する公算は、グジャラート語ヒンズー教の女性のほぼ2倍であることを示しています。


 


この研究は食事についても調査をし、グジャラート語ヒンズー教の女性の方がベジタリアンである傾向があり、したがって食事中の果物と野菜の摂取量がより高く、結果的により多くの繊維を摂取していたことを明らかにしました(McCormack et al., 2004)。食事が乳がんのリスクに影響を及ぼす可能性のあるメカニズムはいくつかあります。考えられる1つのメカニズムは、ホルモンへの作用を経由するものです。食事中の繊維の量を増加させると、血中を循環する性ホルモン(エストロゲン)の濃度レベルが下がりますが、それによって、乳がんのリスクが減少する可能性があります(Gerber, 1998)。


 


乳がんの女性は血中のエストロゲン濃度レベルが高い傾向があることを示すいくつかの研究があります。複数の有望な研究が被験者グループを追跡調査しています。この被験者グループは多くの点で共通していますが、すべての点というわけではありません(たとえば、喫煙の女性もいれば、非喫煙の女性もいます)。有望なコホート調査が被験者グループの行動と何らかの結果(肺がんのような)とのあいだに結びつきがないか調べることになります(コホート調査とは分析疫学における手法の1つ:特定の要因に曝露した集団と曝露していない集団を一定期間追跡し、研究対象となる疾病の発生率を比較することで、要因と疾病発生の関連を調べる観察的研究)。


英国ガーンジー島で実施された有望な調査研究があります。この調査は、乳がんを発症した閉経後の女性61人の血清中の女性ホルモンのエストラジオールの濃度レベルを、発症の平均7.8年前に採血してあった血液サンプルを使って比較検査したものです。179人からなる年齢適合対照群に比べて、乳がんを発症したグループのエストラジオールの濃度レベルは29%上回っていました(Thomas et al., 1997)。もう1つの有望な調査研究は米国からのものです。こちらでは、乳がんを発症した閉経後の女性156人の女性ホルモンの濃度レベルを、発症前の血液サンプルと比較し、それぞれのケースを2つの年齢適合群と対照しました。調査結果によれば、乳がんを発症した女性において、女性ホルモンのエストラジオール、エストロン、硫酸エストロン、硫酸デヒドロエピアンドロステロンの濃度レベルの上昇が見られました。これは、閉経後の女性ホルモンの濃度レベルと乳がんのリスクとのあいだの因果関係を示す強い証拠となります。


 


フィンランドのヘルシンキ大学、臨床化学部において10年余の期間に亘る調査研究があり、その再検証の示唆するところによると、(乳製品と肉製品を特徴とする)欧米型の食事はこれらの女性ホルモンの濃度レベルを上昇させます。同検証は、欧米型の食事との関連において見られるホルモンのパターンは乳がん患者に一般的なものであると結論しています(Adlercreutz, 1990)。


 


ある調査が乳がんのリスクを下げる食事要因、たとえば、食物繊維を突き止めた一方で、別の研究はリスクを上げる食事要因、たとえば、食物脂肪を突き止めています。症例対照研究は特定の特徴をもった被験者グループ(たとえば、高齢で、肺がんの女性)を使います。


この特定のグループは選択されて、情報収集されます(たとえば、喫煙歴)。それから、同様の母集団から対照グループ(高齢で、肺がん無しの女性)が選択され、その被験者が喫煙者かどうかを確認して結論が導かれます(喫煙が肺がんのリスクを高めるかどうか)。食事と乳がんのリスクを検査するために構成された12件の症例対照研究の合同分析の結果、脂肪摂取と乳がんとの間に強い結びつきがあることがわかりました。この検証者によれば、北米の人口のうち食事の変更によって予防可能であったかもしれない乳がんの割合は、閉経後の女性で24%、閉経前の女性で16%でした(Howe et al., 1990)。


 


1999年にロサンゼルスの南カリフォルニア大学医学部予防医学科の研究グループは、13の食物性脂肪の介入研究の検証結果を発表しました。この検証の目的は、脂肪質摂取がエストロゲンの濃度レベルに及ぼす影響の調査でした。調査結果によると、食物性脂肪の摂取の減少(総エネルギー摂取の10%から25%の範囲まで)によって、血清中のエストラジオールの濃度レベルは2.7%から10.3%の範囲まで低下しました。結論としては、食物性脂肪の減少によって血清中のエストラジオールの濃度レベルを下げることができるということ、そして、このような食事の変化によって乳がん予防に向けた一つのアプローチを提供することができるということでした(Wu at al., 1999)。


 


脂肪摂取量と乳がんの発生率とに関する他の複数の研究では矛盾した結果となっています。結果の食い違いは、脂肪摂取量の正確な記録の困難を反映している可能性があります。ケンブリッジのダン人間栄養ユニットのシーラ・ビンガム博士は、こうした問題を克服するかもしれないデータ収集方法を開発しました。ビンガム博士は、1993年から1997年の期間に亘る1万3千人余の女性における詳細な週単位の食事日記を使った食品頻度アンケートメソッドを使用しました。この調査の結論としては、動物性飽和脂肪(主に全乳、バター、肉、ケーキ、ビスケットに含まれる)をいちばん多く食べたグループは、いちばん少なく食べたグループに比べて乳がんを発症させる公算がおよそ2倍でした。従来の調査がこうした結びつきを確立できなかったのは、方法が不正確であったためである可能性があるという結論も出しています(Bingham et al., 2003)。


 


9万人以上の閉経前の女性を対象とした、以下の有望なコホート研究においてハーバード大学医学部の研究チームは、動物脂肪質摂取量が乳がんの高いリスクに結び付けられたことを立証しました。赤身の肉と高脂肪の乳製品(全乳、生クリーム、アイスクリーム、バター、クリームチーズ、チーズなど)が、比較的若い女性からなるこのコホートグループにおける動物性脂肪の主要な原因物質でした。興味深いことに、この調査では、植物性脂肪と乳がんのリスクとの間の明確な結びつきを見つけることはできませんでした。乳がんのリスクの増加と関連付けられたのは動物性脂肪の摂取量だけでした。高脂肪の食事は、エストロゲン(女性ホルモン)の濃度を高めることによって、乳がんのリスクを増加させると今まで示唆されてきました。しかしながら、この研究論文の筆者Eunyoung Cho 博士は、もしその通りであるならば、動物性脂肪の多い食事も、植物性脂肪の多い食事もどちらも高いがんの発生率につながるはずであるが、この調査ではそういう結果にはならなかったと示唆しています。同博士は、牛乳中のホルモンのような何らかの別の成分が、乳がんのリスクを増加させるうえで一役買っている可能性があるのではないかと考えていますCho et al., 2003)。


 


このような結論を受けて、多くの研究チームが牛乳中の内因性のホルモン成分(乳牛によって生産されミルク中に分泌されるホルモン)に目を向け始めました。これについては従来あまり広く論議されていませんでした。今日生産されている牛乳は100年前に生産されていたものとは非常に異なるものです。現代の乳牛は、まだミルクを生産しているうちに頻繁に妊娠させられています(Webster, 2005)。英国の牛乳の3分の2は妊娠牛から搾乳されたもので、残りの3分の1は最近に出産した牛からのものです。これの意味するところは、牛乳中のホルモン(エストロゲン、プロジェストロン、アンドロジェン先駆体)成分は大幅に異なるということです。実は、牛乳中のホルモンの濃度レベルの高いことが、卵巣がんや乳がんといったホルモン依存性のがんの発達に関連付けられてきているのです。


 


40カ国間での食物摂取と乳がん発生率との関係の検証において、肉・牛乳・チーズの消費量と乳がんおよび卵巣がんの発生率の間に正の相関関係が見られました。最も密接に乳がん発生率に関係しているのは肉で、次に牛乳とチーズでした。対照的に、穀物および豆類は、乳がんの発生率と負の相関関係にありました。この検証は結論として、動物性食品の消費増加はホルモン依存性のがんの発達に有害な影響をもたらす可能性があるとしています。牛乳と乳製品は特に懸念されている食物リスク要因です。その理由は、今日わたしたちが飲む牛乳の相当量が妊娠している牛から生産されていて、そうした牛乳中のエストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の濃度レベルは顕著な上昇を示すからです(Ganmaa and Sato, 2005)。


 


動物性脂肪や化学的汚染物質に加えて、牛乳と乳製品には複数のホルモンと成長因子が含まれています。牛乳中のこうした成分は、人間の乳がん細胞の増殖に関与していることが指摘されています。ニュージャージー州、プリンストン大学の研究者たちは、乳製品の消費を乳がんのリスクに関連付ける証拠の検証をふまえ、牛乳は、成長ホルモン因子IGF-1の作用によって、乳がんの成長を促進している可能性があると結論しています。この成長ホルモン因子IGF-1は実験室において、人間の乳がん細胞の成長を刺激することが明らかになっています(Outwater et al., 1997)。これとは別に、Yu and Rohanの両氏は、がんの成長におけるIGF-1の役割の検査をふまえ、細胞の成長と死滅の調節において、IGF-1が決定的な役割を果たしていると述べています。IGF-1のこうした働きは、さらにがんの発達にも関与しているのではないかという推測に至ります。


 


実験室実験によって、複数のIGF-1に、広範な種類のがん細胞の成長を刺激し、細胞死やアポトーシスを抑止する能力があることが証明されています(Yu and Rohan, 2000)。ここでの懸念は、もしIGF-1が実験室のシャーレの中の人間のがん細胞に成長をひき起こすことができるならば、食事において消費された場合、同じようながん誘発効果があるかもしれないという点です。IGF-1はすべての牛乳中に存在しており、パスチャライズ(加熱処理)によっても破壊されません。ワシントン州の責任ある医療をめざす医師委員会(PCRM)のJ.L. Outwater 博士は、IGF-1は腸壁を通過して吸収される可能性があると警告し、人間の場合、乳離れ後の習慣的な牛乳摂取は乳房組織にIGF-1の生産を促し、その量は細胞分裂を促進させるほど多く、その結果がんのリスク


ジェイン・プラントCBE教授(英国地質調査所の主任科学者)は、「乳がんと牛乳」邦題 Your Life in Your Hands の中で、自分の食事からあらゆる乳製品を排除することによって、いかに乳がんを克服したかという非常に個人的で感動的な物語を語っています。


 


プラント教授は 1987 年に乳がんと診断されました。彼女はその乳がんを5回再発し、1993 年には、がんは彼女のリンパ系に広がっていました。彼女は首にしこりを感じることができ、余命3か月、運が良ければ6カ月と宣告されました。しかしながら、彼女はこの“問題”の解決方法を見出すために、自分の科学者としての素養を活かそうと決心しました。彼女は他の文化における乳がんの調査を始め、中国のはるかに低い乳がん発生率を見つけました。


 


データの示すところによれば、中国農村部における乳がん発生率は女性10,000人のうちたった1人です。これに対して英国では女性10人に1人です(現在、9人に1人)。プラント教授は、より欧米化したライフスタイルを送る裕福な中国女性(たとえば、マレーシアやシンガポール)の間では、乳がん発生率が欧米の発生率と似たり寄ったりであることに着目しました。さらに疫学的証拠の示すところによれば、中国女性が西洋社会に移住すると、1世代か2世代のうちに乳がんの発生率と死亡率が増加して、移住先の西洋女性と変わらなくなるのです。こうした事実は、食事とライフスタイルががんのリスクの主要な決定要因であることを強く示唆します。


 


同教授は乳がん発症リスクにおける食生活の役割を調査することを決めた。彼女は、栄養・環境・健康 に関する中国・コーネル大学・オックスフォード大学・プロジェクトの調査結果を検証しました(Campbell and Junshi, 1994)。この研究プロジェクトは、1983 年から1984年の間に中国で実施された中国全土的調査に基づいたものでした。この共同プロジェクトの参加者は、米国コーネル大学のT. Colin Campbell、中国は北京の予防医学中国アカデミーの Chen Junshi、同じく北京の中国医学アカデミーの Li Junyao、そして、英国オックスフォード大学の Richard Peto でした。この共同プロジェクトによって、食事と健康についての驚くべき洞察がもたらされました。一例として、中国人の1日の摂取カロリーは米国人よりも多いのですが、そのうち脂肪由来のカロリーはわずか14%に過ぎず、欧米諸国ではなんと36%です。


 


この事実と、中国人は西洋人よりも身体的により活動的であるという事実を併せて考えると、なぜ欧米の人々が中国人よりもずっと肥満になりやすいかがわかります。しかしながら、プラント教授自身の食事は特に高脂肪だったわけではありません。実際、彼女の食事はむしろ低脂肪で高繊維だったのです。そのとき、プラント教授の頭にあるひらめきがありました。中国人は乳製品を食べないのだ!プラント教授は、その時までヨーグルトと有機の脱脂牛乳を摂取していたのです。彼女は


すべての乳製品を断ちました。すると、数日で首のリンパ腺の腫れが引き始めました。乳がんの腫瘍は小さくなり、ついには無くなってしまいました。これによって、プラント教授は乳製品の消費と乳がんとのあいだにはある因果関係が存在するという確信を得るに至りました。この当時、プラント教授は化学療法を受けていましたが、効果があるようには思えませんでした。彼女の担当医師までもが、彼女の命を救ったのは食事の変更であると確信するほどでした。がん専門医のこの医師は今や自分の乳がん患者に対する指導において、がんの死亡率分布図を示しながら、乳製品排除の食事を推奨しています。


 


プラント教授は最終的には自分の乳がんを克服したのですが、それは、自分の食事から乳製品を排除し、それらを健康的な代用食材に置き換え、ライフスタイルを多少変更することによってでした。プラント教授は、もし自分の乳がんのリスクを減らすために何か一つしたいというのなら、乳製品から大豆食品へ切り替えるよう助言します(Plant, 2000)。乳がん患者に健全な食生活アドバイスを提供することによって生存率が大幅に増加するでしょう。これらの観察は総体として、植物性の食事は乳がんに結びつくリスク要因の多くを減らすことができることを示しています。


 


大腸がん(結腸がんと直腸がん)


大腸がん(結腸がんと直腸がん)は、英国で新たに診断されるがんのおよそ8人に1人に当たり、がんによる死亡の9人に1人に当たります(National Statistics, 2005a)。大腸がんは英国の男性にとって3番目に多いがんで、英国の女性には2番目に多いがんです(Cancer Research UK, 2005)。


 


大腸がんは腸の細胞の再生のプロセスがうまくいかないときに発生します。異常な細胞ががんに発展する可能性のあるポリープ(小さな増殖)を形成することがあります。大腸がんの危険因子は間違った食生活、肥満、アルコール、喫煙などがあります。


 


大腸がんの原因は知られていませんが、動物性脂肪と動物性タンパク質が多く、繊維量が少ない食事と結びついている可能性があると考えられています。大腸がんのリスクを減らすために、英国政府は多くの新鮮な果物と野菜を含む健康的なバランスの取れた食事を推奨しています。規則的な運動をすること、健康的な体重を維持すること、アルコールや喫煙を避けることも重要です。


 


果物と野菜(したがって繊維)を豊富に採り入れ、かつ無精白の穀物をベースとした食事が持つ


予防的役割は実証されています。食事と大腸がんの関係を調査した2つの大規模な研究があります(2つともランセット誌に掲載)どちらの研究も、食物繊維の摂取量が増加するにつれて大腸がんのリスクが減少することを確認しました。一方の米国国立がん研究所の研究チームは、少なくとも1つの腸腺腫かポリープ(がんに転換するかもしれない良性腫瘍)のある3,591人を、そういったポリープのない33,971人と比較しました。その結果、食物繊維の摂取量の高い上から20%の被験者グループは、対極のグループ、つまり食物繊維の摂取量の低い下から20%の被験者グループよりも、腸腺腫のリスクが27%低いことがわかりました。両グループの食物繊維摂取量の差は1日24gでした。特に穀物、雑穀、果物由来の食物繊維は、大腸腺腫のリスク減少に関連があると結論づけられた(Peters et al., 2003)。


 


もう一方のさらに大規模な研究は、EPIC(欧州がんと栄養予想調査)による、ヨーロッパ10カ国から募った 25 – 70歳の 51万9,978人 を対象に食物繊維摂取量と大腸がんの発生率を調査したものです。被験者は1992年から 1998年にかけて食事についてのアンケートに回答し、その平均4.5年後にがん発生率を追跡調査されました。ここでもやはり、食物繊維摂取量が最高のグループ(1日35g)の大腸がんリスクは、摂取量最低のグループ(1日15g)を40%下回りました。食物繊維の平均摂取量が低い被験者グループでは、食品からの総繊維摂取量を約2倍にすることによって、大腸がんのリスクを40%減少できました(Bingham et al., 2003a)。こうした調査結果は、食事中の無精白の穀物、果物、そして野菜の量を増加させると大腸がんのリスクが減少することの説得力のある証拠を提供します。


 


食物性繊維が大腸がんを予防する可能性があることが証明されてきている一方で、動物性食品(動物性脂肪と動物性タンパク質)が大腸がんのリスクの増加に関与している可能性を示唆する証拠があります。EPIC(欧州がんと栄養予想調査)の別の研究において、研究者たちは1992年から 1998年の間にがんではなかったヨーロッパ10カ国の男女 47万8,040人の追跡調査を実施しました。食事とライフスタイルについての情報も収集されました。平均4.8年後の調査において、1,329例の大腸がんが確認されました。赤身の肉、加工肉、鶏肉、魚の摂取との関係についての調査が明らかにしたところによると、大腸がんのリスクは赤身の肉および加工肉と正の相関関係にありました(Norat et al., 2005)。


 


最近の研究において、乳製品およびカルシウムの消費量と大腸がんのリスクとの間の関連が、北アメリカおよびヨーロッパからの10のコホート研究の統合解析によって検証されました(Cho et al., 2004)。同研究で著者らは、牛乳とカルシウムの消費量は大腸がんのリスクの低さと関連すると結論しました。ただし、カルシウム(そしておそらく乳製品)の摂取と大腸がんとの逆相関はビタミンDの高摂取な被験者の間で統計的に有意であるにすぎませんでした。これは、ビタミンDがカルシウムの吸収を促進するためか、もしくはビタミンD自体が大腸がんの発生率を減少させるためである可能性があります(Garland, 1999)。これらの調査結果と対照をなして、ほとんどの予想調査の示すところでは、食物性カルシウムの摂取の増加による大腸がんのリスクの減少はせいぜい中程度で、統計的には有意ではありません(Ma et al., 2001)。


 (以下 略)

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翻訳ありがとうございます。
興味深く読ませていただきました。

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